Science & Technology

HuLA immuneでは、新規の免疫作用メカニズムの追究を通じて画期的な医薬品/診断薬の創製を行っています。

Neo-Self

Ⅰ.ネオセルフ理論を応用した自己免疫疾患治療ネオセルフ理論を用いたプロジェクトへ 

免疫系が正常に機能しなくなり、自身のたんぱく質を標的として攻撃してしまう病気のことを自己免疫疾患と呼んでいます。

2014年、自己免疫疾患の根幹を説明する新規メカニズムを荒瀬教授らが発見しました (文献 1)。感染症などによって産生されるサイトカイン等が、本来は外来抗原提示機能を持たない細胞(例、血管内皮細胞等)にHLA-II分子を異所的に発現させ、その際にHLA-II分子が自己タンパク質と異常な複合体を形成し、“ネオセルフ抗原”として細胞表面に提示されるという機構です1) (図 1)。“ネオセルフ抗原”が起点となり、“ネオセルフ抗体”が産生され、自己免疫疾患が形成されるものと我々は考えております。新しい(「ネオ」)考え方に基づく自己(「セルフ」)抗原に対する抗体なので、“ネオセルフ抗体”と名付けました。

ネオセルフ抗原の生成

血栓症や不育症を起こす自己免疫疾患として抗リン脂質抗体症候群(Anti-Phospholipid Syndrome, APS)が知られています。臨床症状からAPSの疑いがあるにもかかわらず、現行の診断法では自己抗体が検出されない患者さんにおいてネオセルフ抗体が高頻度に検出される研究成果が報告され2), 3)、ネオセルフ抗原は自己免疫疾患の病態と深くかかわっているとの認識が広まってきています。さらに最近では、COVID-19の重症化の際に認められる血栓症がAPSの病態に類似していることが示唆されており、感染症へのネオセルフ抗体の関与にも着目して研究を遂行しています。

HuLA immuneでは、ネオセルフ理論をプラットフォームとして、これまで治癒することができないとされてきた各種自己免疫疾患(APS、MPO-ANCA血管炎4)、1型糖尿病等5) )に対する治療薬および新規診断薬に関する研究開発を推進しています(特許登録済)。

文献
1) Jin H. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2014      Link     
2) Tanimura K et al. Blood 2015      Link     
3) Arase N et al. Br. J. Dermatol. 2017      Link     
4) Hiwa R et al. Arthritis Rheumatol. 2017      Link     
5) Matsumoto Y et al. BBRC 2021      Link     

COVID-19

Ⅱ.COVID-19:新たに発見された感染増強抗体感染増強抗体を用いたプロジェクトへ  

1)Spikeタンパク (Sタンパク質)のNTDを標的とする感染増強抗体

大阪大学とHuLA immuneの共同研究において、SタンパクのN末領域(NTD)に存在する特定のエピトープを標的とする新規の感染増強抗体がCOVID-19患者から発見されました6)。この抗体がNTDに結合することで、Sタンパクのレセプター結合領域(RBD)のヒト受容体 (ACE2)への 結合性が顕著に増強されるというもので、この発見は SARS-CoV-2におけるADE(抗体依存性感染増強)の実体を世界で初めて捉えたものとなりました。

SタンパクのNTDを標的とする感染増強抗体

我々は、この感染増強抗体の測定技術を臨床検査へとステージアップさせ、新規の重症化予測マーカーおよびワクチン接種対象者スクリーニング等への活用を目指します。

2)感染増強抗体を誘発しないワクチンへの応用

上記の感染増強作用を引き起こすSタンパクのNTD上のエピトープ配列を修飾し抗原性を変化させることにより、感染増強作用を引き起こさないより安全なワクチンの開発が可能となります。世界的なコロナ禍において安全で有効なワクチンをいち早く提供することは極めて重要な課題であるため、ワクチンメーカーとの技術提携をスピーディに進めていきます。

文献
6) Liu et al. Cell 2021      Link